六本木に事務所と住居を構えて5年になります。
寝ても覚めても欲の渦巻く六本木。
表通りには日本人だけでなく、国籍も想像つかない外国人のポン引きが等間隔で目を光らせている。
ゴツゴツと荒れた歩道に、鋭いヒールを突き刺していく華やかで残酷なお姉さん。
無味乾燥のビル群を鮮やかに彩る高級車。
自分の居場所すら分かっていないであろう泥酔したオヤジ達。
そんな六本木では毎日どこかしらで華やかにお店が開店し、人知れずクライマックスを迎えている。
我々も同じく六本木で店舗ビジネスを経営しているので、人ごととは思えない。明日は我が身。
今日書かせていただくのは、通勤途中で見かけたそんな怖い話の一つ。
あれは一年前ほど前。小綺麗なビルの1階のお店がそそくさと改装工事をしていた。数日前まであったお店すら思い出せない。それほど入れ替わりが激しい。
工期は1週間ほどだろうか。ほどなくして、よく見る祝開店のお花が軒先に並んでいた。
ランチ営業はしておらず夜だけだったのだろう。あまり気にせずにいたが、数ヶ月するとランチも開け出して、店頭にメニューが並び始めた。
特製ラーメン 1350円
周りには有名ラーメン店のAfuri、武蔵、一風堂、一蘭などが出店する場所で一番強気のプライシング。
「たけーわ」
と思いながら素通りした。すると数週間後、
特製ラーメン 1350円
*ランチは味玉子または大盛りサービス
と優しめのオファーが書いてあった。
味玉子すきなオジさんじゃないですか?僕って。
入店すると立派な木製カウンター、奥に個室があり、夜は高級和食店として営業しているようで、味を知ってもらおうと、ラーメンをランチに提供していることがわかった。
一口スープをすする。
めっちゃ美味い。。。六本木で食べた、いや、今まで食べたラーメンの中で1,2位を争うほどの美味しさ。
なるほど。これは1350円だわ。
味玉子じゃなくて大盛りにすればよかった。そんな後悔すらしながら、カウンター越しにいる料理人の方に
「夜はどんなお料理なんですか?」
と聞くと、
「夜は和食のコースを提供しております。1万円からとなっております。個室もございますのでよろしければご覧になっていってください」
と、ちょうどいい物腰の柔らかさで教えてくださった。
店員さんの感じも良いし、確かに奥にはしっかりと個室になっていて会食にはもってこいだな、と思った。
お会計の際には、お店ができた経緯と情報が書かれたショップカードを渡され、そして目を疑った。
どうやら、このお昼はラーメンを提供している和食屋の料理長、ご出身は超有名&高級店で修行を積み、独立するにあたりクラウドファンディングでとんでもない金額を調達して出店したらしく、なんと
会員制らしい
えええええ???
アイアム ノット メンバー ですけど?
と思い聞くとお昼はメンバー以外の方にもラーメンを提供しているとのこと。
なるほど。では会員になるためには?と尋ねると、夜のコースを予約するためには1万5千円の入会金が必要とのこと。
今はまだ枠があるので募集しています、いかがですか?とご提案いただいた。
よくわからんが、クラウドファンディングのリターンで出したと思われる会員権はどうなっているのだろうか?
ラーメンは超絶うまいのはわかった。
ただドリンクメニューや夜のコース、評価もわからなかったので、のちほど調べようと思い、検討する旨を伝えお店をあとにした。
検索をしてみると、やはりクラウドファンディングで大人気だったようで会員になると本来5万円以上はするこだわり抜いた本格日本料理が1万円台で食べられるらしい。
さらに、電話番号、住所は非公開、とのことで
正直、接待にはいいな、と思ったし、連れてこられた方も喜ぶだろうなと思った、
もし
昼にラーメン屋をやっていなければ
住所も電話番号も非公開で会員しかお店を予約できない、
という制限をつけておきながら、お昼は誰でも入れるラーメン屋。
もし、私が会食相手をお誘いし、その方がお昼の事をしてっていたらどう思うだろうか?
「あー、あのラーメン屋ね」
である。微妙ではないだろうか!?
和食が凄くてラーメンが微妙と言っているのではない。
会員制であるメリットとモチベーションをなぜ敢えてぶっ壊すか?
であれば、最初から会員制にしないでほしい。そしたらもっと気軽に使える。知らんけど。
で、である。
会員が集まらなかったのか、数ヶ月後、彼らは何をしたか?見込み客の母数を増やしたかったのであろう、
特製ラーメン 1350円
15時まで 980円
値下げだーーー。
もはや会員になりたい欲は消え失せ、
既存会員様の価値を下げるのやめて!
と思うほど。
2020年、正月明け、お店の前を通ったらランチはもうやっていなかった。
そして、夜も営業をすることもなかった。。。。
路面店は解約の申し出が半年前とかなので、値下げを始めた頃には閉店が決まっていて、少しでも多くの撤退費用の現金を集めていたのだろう。
クラファンで初期投資を賄えたとはいえ、約1年で閉店。お金をいただいた既存の会員様へのお詫びもあるだろうし、想像するだけでゾッとするし、とても胸が痛む。
あれだけ美味しいラーメンを食べられなくなるのは僕も悲しい。
この一件を見て、いろんな学びがあった。
まずは、ブレない大切さ。
無駄に会員制などして間口を狭めない。相当著名でファンが付いている実力者なら会員制でも良いだろうが、限られた会員だけでビジネスが回るほど甘くないようだ。
会員制などしなくても実力、マーケティング力など色々な要素が合わされば、予約困難なお店になる。
お客様、会員様に対する想像力も必要だ。
さて、今から僕も大切な会議だ。
自分の力を過信せず、間口を狭めず、まずはいろんな意見を聞いて今後の戦略を決定したい。
本日もお仕事頑張りましょう。